2020年6月24日水曜日

無駄共同体みたいなもの、そうゆうのできないかな?~大谷直史さん(みんなの居場所ぽっと)インタビュー 4/4~


現在YokaYokaでは、余暇支援に関わっている方を(主に遊び、余暇、居場所)中心に、『明日何しようかな~余暇支援に関わる方へのインタビュー~』と称して、お話を聞かせて頂いています。

鳥取でみんなの居場所ぽっとという居場所を運営している大谷直史さんに、「居場所とゲーム」を中心に、様々なお話を聞かせて頂きました。お話を聞かせて頂いたのは、新型コロナウイルスによる影響が本格的になる前の2月の下旬です。視察も兼ねて、ぽっとさんには2泊3日お世話になりました。

今回で4度目の更新、最終回になります。

前回は、コミュニティを作ることにより、境界線の内と外を作ってしまうという矛盾、それから、余暇も役に立つ余暇という事が強調されるようになっていってしまっている現状について、インタビューを通して共有させて頂きました。

前回までのインタビューは、↓↓↓↓
単体の家族が自由にアクセスして、もう少しゆるく、広く、『贈与関係』を結ぶような組織が必要~大谷直史さん(みんなの居場所ぽっと)インタビュー~

ゲームは、ゲームに付随してコミュニケーションを発生させるので、良いという事~大谷直史さん(みんなの居場所ぽっと)インタビュー2/4~

「する」ではなくて「いる」なんだよね。そこに「いる」だけの為に来る人が増えれば~大谷直史さん(みんなの居場所ぽっと)インタビュー3/4~

今回は、今後に目指していく共同体の理想について意見を交換しています。インタビュアーが、どんどん持論を展開していく少し風変わりなインタビューも今回が最後です。

インタビューに快く応じてくれたみんなの居場所ぽっとの大谷さんをはじめたとしたぽっとの皆様、本当にありがとうございました!!
鳥取の観光案内までして頂きありがとうございました。



無駄な事を一生懸命楽しめるという点で、ゲームは優れている。

― 当初バズワードカフェは、市民活動でよく使われる言葉を定義する為にやったんですね。言葉の定義が定まらないと、議論が深まっていかないと感じていたので。でも、実際に開催してみたら、言葉に対して、各々のとらえ方が異なっていて、違いが実感できるという点が面白かった。言葉の輪郭が人それぞれ異なると表現しますが、そちらの方が面白かった。結果、1つの定義に当てはめようとしなくても良いという考え方になりました。それと、余暇支援の方法として、なぜゲームという手段を用いるのかと問われる事があります。



大谷:ゲームの良い所は、やっぱり無駄だからでしょう。料理だと、やっぱり役に立っている感がある。スポーツも健康に良いという役に立っている感じがある。ゲームは、あきらかに無駄。カタンの開拓者を上手になっても、それは無駄。無駄だとわかっているにも関わらず無駄な事をやるのに、ゲームは良い。

― でも、カタンの開拓者の交渉を経験する事によって、会話が上手くなると言う人がいるかもしれないですよ。

大谷:まあ、効果はいくらでも言えるでしょうね。

― 僕もゲームは役に立たないものだと思っています。そもそもゲームをやろうと言う時は、ゲームを楽しむ以外の目的は持たない。勝利を目指す時はもちろんありますが。

大谷:ゲームをやる事が目的だけど・・・それは、メタレベルでは、ゲームが無駄だという事を知っている。知っているにも関わらず、あえてゲームがしたいと感じる。そこに、邪心がないよね。健康に良いとか、おいしいもの食べれるとか、異性にモテるようになるとか・・・そうゆう邪心がなく、無駄な事を一生懸命楽しめるという点で、ゲームは優れている。

― ゲームの中の手続きさえ踏んでいけば、時間を自然と共有できる点は便利だと感じています。コミュニケーションが個人の能力に問われがちな時代に、とても良いツールだと思っています。

大谷:それは、やっぱりゲームが無駄だからだと思う。有用な事をみんなでやると、そっちに目を奪われて、コミュニケーションどうでも良いみたいな感じになってしまう。

― この副次的なものが、大谷さんが言っていたノイズに近いかもしれないと感じました。当初は、ゲームは訓練的なもので、ノイズは発生しづらいと思っていたのですが。

大谷:副次的なものが重要なメディアかもしれないね。あるいは、無駄な事を一緒にやっている共同性が、有用な事を一緒にやっている共同性より強いかもしれない・・・

― まあ、僕は無駄な事をやっていると思って遊んではいないですが。

大谷:もちろん、やっている時はね。後から振り返ると、あの2時間無駄だったなと。

― 効率性を重視すればそうかもしれませんが。あの2時間でもっと効率の良い事ができたなという感じの事があるかもしれませんけど。

大谷:きっと、無駄な事が良いはずだよ。

― ただ、何度も言うように、必ず効果が見込めるゲームとかはない訳じゃないですか?これで必ずのびるコミュニケーション、ザ・コミュニケーションゲームみたいのはない。

大谷:そうゆう言い方はするだろうし、僕もそうゆう言い方をするけれど、それは、単なる宣伝文句であって、

― だいぶ市場の方に取り込まれていませんか?

大谷:大学はね。大学も本来は無駄なもので。本当は無駄なことばっかりやっている。

― 選択と集中という言葉を用いて、基礎研究の予算が削られているというのは

大谷:役に立たないものが切り捨てられていくんだけど・・・・なんか、無駄共同体みたいなもの、そうゆうのできないかな?

― 無駄共同体ですか?

大谷;かつて、負の共同体と呼ばれて、なにか問題を抱えている人達が持つ共同性みたいな

― それは、当事者会とは異なりますか?

大谷:今は、当事者会という言い方をするかもね。無駄な事を一緒にやっている間柄に生じる共同体。

― でも、無駄共同体と名乗った瞬間、終わっちゃいませんか?目的化していませんか?

大谷;名指したら終わってしまう。だから、名指してはいけない。

― ここに建前を名付けるといいと思います。斎藤環さんが、「親密さのアフォーダンス」という文献の中で、引きこもりがちな人で対人恐怖傾向が強いけど、誰かとコミュニケーションを取りたい人にとって、狭さがコミュニケーションを発生させる言い訳になると述べていて・・・

大谷:ゲームは建前になるよね。

― 僕もこの文献を読んだときに、ゲームがその言い訳を発生させる媒介になると思いました。気の利いた事を言わなければという恐れが、ゲームを通すことでマイルドになる。

大谷:そうか。それを名指してしまったのが、コミュニケーションする為のコミュニケーションか・・・

― まあ、時間もだいぶ長くなったので、一度終わらせて頂きます、今日は、ありがとうございました。

みんなの居場所HP:https://potpot.localinfo.jp/

大谷直史さん(鳥取大学 教育支援・国際交流推進機構 教員養成センター 准教授)
北海道大学教育学研究科博士後期課程単位取得退学。専門は、社会教育学、 環境教育学。他者理解やコミュニケーション促進のツールとしてボードゲーム の開発・作成を行う。鳥取市に「みんなの居場所『ぽっと』」を設立、不登校の 子どものケアや子ども食堂の運営など、長年にわたり子どもの居場所づくりを 行っている。「ヒトトイロ」というボードゲームのデザイナーでもある。

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