YokaYokaの前田です。
今回は、2018年8月25日に発売されたバンド・デシネ「見えない違い 私はアスペルガー」を読んだ感想を書きたいと思います。
これから書くのは、外国の漫画が好きで、障害がある人と関りがある仕事をしている物好きな人の感想文ぐらいを読むぐらいの軽い気持ちで目を通して頂けると助かります。
まず、バンド・デシネとは何ぞや?と思った方は、見えない違いの翻訳者でもある原正人さんの説明を読んでいただきたい。
簡単に説明すると、フランス語圏の漫画の事を指します。
こちらの本は、アスペルガー症候群の当事者であるジェリー・ダシェさんが原作を担当している事もあり、見えない違いからくる苦しさだったり、誰とも繋がれない気持ち等、障害がある人の“当事者性”を上手に表現されているように思います。
アスペルガー症候群については、LITALICOのこちらの記事を参考にされるとわかりやすいかもしれません。
日本の漫画でも、発達障害当事者の方が書いた漫画は数点はあります。
その中でも有名な漫画として、沖田×華(ばっか)さんの「ニトロちゃん みんなと違う、発達障害の私」があげられると思います。
「ニトロ」ちゃんも、障害がある人の“当事者性”がとても上手に表現されていると思います。
これから、「見えない違い」と「ニトロちゃん」の障害がある人の“当事者性”がどのように表現されているのかを交互に見ていきたいと思います。
①マイルールの大切さ
まず、「ニトロちゃん」ではP12にニトロのルールその1と題して、家から学校までの登下校のルーティーンについて描かれています。
ニトロちゃんは、学校までの行きと帰りの間に、必ず通らなければならない道、寄り道しないといけない所等が決まっていて、一つでも忘れるとそわそわして落ち着かなくなったり、友達と帰る時もそのルーティーンに付き合わせてしまい、一緒に帰ってもらえなくなるエピソードが書かれています。
一方「見えない違い」の方では、主人公のマルグリッドが27歳という大人の女性という事もあり、家から会社までの道のりがいつも同じというマイルールが紹介されています。
しかし、ニトロちゃんのようにエピソードとして見せるのではなく、何回も同じ道を通るコマを見せる事により、同じ道を通る事がマルグリッドにとって重要であるのだとわかります。
②言葉の通り受けとる
ニトロちゃんでは、言葉の通り受け取るエピソードとして、お母さんに幼年期の弟を『ちょっと出かけるから目を離さないでね』と頼まれた時のエピソードが描かれます。
言葉の通りずっと目を離さず見ていたニトロちゃんは、階段から落ちた弟が泣いていても、『おー泣いとる、泣いとる』と思いながら見つめているというオチが描かれています。
一方「見えない違い」では、会社の上司らしき人に『N社の書類は、あなたのところ』と聞かれて、「ええ」と答え、お互いがシーンとなるコマが描かれています。
その後上司に、『じゃあ、その書類もらえる』と言われて、書類を渡して欲しいという事だった事に気づき、慌てて渡しています。
[ニトロちゃん]の特徴として、沖田さんの幼少期から中学卒業までのエピソードが書かれており、学校での生活が中心に描かれています。学校生活の中で、ニトロちゃんの“当事者性”が周りに理解されないので、コミュニケーションのずれから生じる行き違いが生まれていきます。しかし、ニトロちゃんの学年があがるにつれて、そのずれが体罰やいじめ等に発展していき、ニトロちゃんが追い込まれていく様子が描かれています。
「見えない違い」は、当事者性が理解されない事を“色”で表現していると感じます。
特に、赤色と黄色の使い方が抜群で、赤は苦手なものを表す色。
黄色は、自分が落ち着ける場所の色として使われいるように感じます。
当事者性をエピソードで見せていく「ニトロちゃん」
当事者性をエピソード+色で表現していく「見えない違い」
どちらも、先ほど記したように障害がある人の“当事者性”が理解されない事から苦しんでいる様子が描かれています。そして、周りに理解者が出来た時に、ニトロちゃんもマルグリッドも生きている世界が良い方向に変化していきます(ニトロちゃんはエピソードで、見えない世界は色で表現しています)。
これは、障害というのは社会の中に存在するもの、つまりは社会モデルであると教えてくれます。
「ニトロちゃん」を持っている方は「見えない違い」を、「見えない違い」を持っている方は「ニトロちゃん」を購入して頂けたらと思います。
両方持っていないが、障害について興味がある方は、どちらから読んでも面白いと思います。
それは、評論家である荻上チキさんが、両方ともwebやラジオでおススメとして紹介された事です。
たぶん、そちらの方が作品をしっかり評論してくれていると思いますので、是非とも参考にしてみて下さい。
*2018年9月4日(火) 誤字・脱字を直しました。
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